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2026/01/30

道央ワーケーション研修会 実施レポート

 地域産業と触れ合いながら、ワークとバケーションを楽しむ。そんな新しい企業合宿・研修の形を探るワーケーション研修会を、11月に道央地域(千歳市・小樽市・余市町)で実施しました。

 本研修会には、首都圏や関西の企業・団体から5名が参加しました。環境教育を軸に企業研修・大学研修を数多く手がけてきたCORE 北海道体験教育協会 中島吾郎氏、日本ワーケーション協会公認ワーケーションコンシェルジュ 惣田好法氏をアドバイザーに迎え、3泊4日で道央地域を巡りました。

 単なる「観光+リモートワーク」ではなく、地域産業の理解、環境教育、チームビルディングを組み合わせた企業研修型ワーケーションとして設計した点が本研修の特徴です。参加者が地域を深く知ると同時に、企業側にとっても人材育成や組織づくりにつながる実践的な内容となりました。

【行程】

1日目(11月18日)支笏湖で学ぶ自然環境とチーム体験

 新千歳空港到着後、道の駅「サーモンパーク千歳」で地域食材を使った昼食をとり、支笏湖へ移動しました。支笏湖は「支笏湖ブルー」と称される高い透明度を誇り、水質は11年連続で日本一に選ばれていました。

 支笏湖ではカヤック体験を実施しました。2人1組で協力しながらカヤックを操作し、雄大な自然を体感するとともに、国立公園・支笏湖の水質や環境保全に関する解説を受けました。自然の中での共同作業は、参加者同士の距離を縮めるきっかけとなりました。

 宿泊は「休暇村支笏湖」です。豊かな森と湖を望む環境の中で、源泉かけ流しの温泉や地元食材を使った食事を楽しみました。

2日目(11月19日)ワークとアクティビティのメリハリを体感

 午前中は「南千歳テレワークステーション」内で、静かで落ち着いた環境のもと、各自業務を行いました。昼食には、千歳市内で北海道名物のスープカレーをいただきました。

 午後は小樽市へ移動し、雪景色の中での乗馬体験を実施しました。初心者でも参加しやすい内容で、森の中を進みながら大自然を五感で感じる貴重な体験となりました。

 その後は、「いいオフィス小樽」にてワークを実施しました。ゲストハウスのリビングを活用したユニークなワーキングスペースで、電源・Wi-Fiに加えてキッチンも完備されています。コーヒーを片手に、参加者は集中して作業に取り組みました。

 宿泊は「ホテルノルド小樽」です。小樽運河沿いに建つヨーロッパ調のホテルに滞在し、夜は各自で幻想的な小樽の街を散策しました。

3日目(11月20日)地域全体で取り組むサステナブルな暮らしと価値観を学ぶ

 午前中は、「ステイズ小樽」の1室を貸し切ったワークスペースで業務を行いました。宿泊施設の一室を活用した空間で、デスクワークに適したコワーキングスペースをはじめ、カウンター席、リラクゼーションスペース、独立した個室ブースなど、多様なワークスタイルに対応した設備が整っています。集中して作業を行ったり、オンラインミーティングを実施したりと、それぞれのスタイルで午前中のワークを終えた後、余市町へ移動しました。

 余市では、環境への負荷を抑えた持続可能な暮らしを実践する「余市エコビレッジ」を訪問しました。エコビレッジでは、自然エネルギーの活用や循環型の暮らし方、地域資源を生かした住環境づくりなど、日常生活そのものを通じてサステナビリティを体現しています。今回は、こうした取り組みの背景や考え方について説明を受け、地域と共生する暮らしのあり方を学びました。

 昼食には、地産地消の食材を使った食事をいただき、食の面からも地域循環の考え方に触れました。

 午後は、エコビレッジでの取り組みを踏まえた学びを中心に、参加者同士の対話を取り入れたチームビルディングを目的とする研修を実施しました。地域と共生する暮らし方や価値観を共有しながら、日常業務から一歩離れて自身や組織、働き方について考える時間となりました。

 宿泊は余市川沿いに佇む温泉宿「ホテル水明閣」です。自然に囲まれた静かな環境の中で、1日の学びを振り返りました。

4日目(11月21日)自治体との意見交換と今後への示唆

 最終日は小樽市内で意見交換会を実施しました。小樽市、千歳市(オンライン)、余市町(オンライン)の担当者から、ワーケーションや移住、企業研修誘致に関する取り組みが紹介されました。

 また、中島吾郎氏からは企業研修・チームビルディングコンテンツ造成のポイントについて助言がありました。

 その後、参加者、アドバイザー、自治体担当者による意見交換を行いました。意見交換では、ワーケーション推進における課題と今後の展望について活発な議論が交わされ、特に

  • 行政は他市町村とも連携して地域の魅力を発信した方がよい。
  • ワーケーションが関係人口創出の入口となり、二地域居住やふるさと住民登録制度の総合的な窓口となるようにしたらよい。

などが重要な視点として挙げられました。

 意見交換後は、小樽のラーメンを味わいながら研修会を締めくくりました。

【参加者からのご意見(意見交換会から抜粋)】

普段なかなか体験できないカヤックや乗馬が印象的でした。

非日常の体験を通じて、気持ちの切り替えができました。

観光とワークだけでなく、地域ともっと深く関わる要素があると良いと感じました。

余市のエコビレッジは学びが多く、もう少し長く滞在したいと思いました。

家族向けにも応用できる体験コンテンツだと感じました。

【今後の課題】

事前設計・コミュニケーション

 本研修を通じて、事前設計の重要性が改めて明らかになりました。事前に地域の背景や課題、自治体側の考えを参加者に共有することで、現地訪問時には表層的な理解にとどまらず、より踏み込んだ意見交換や議論が可能になります。また、事前連絡や情報共有の手段として、メールだけでなくFacebookやLINEなどのSNSを活用することで、心理的な距離が縮まり、双方向のコミュニケーションが促進されると考えられます。

自治体・企業双方の目的整理

 自治体側の目的や期待する成果が明確であることは、ワーケーション事業の質を高めるうえで欠かせません。誰に何を届けたいのか、どのような関係性を築きたいのかを整理し、検証可能な形で設計する必要があります。同時に、企業側にとってのメリットも、福利厚生といった表層的な価値にとどまらず、社員研修や人材育成、社会貢献といった本質的な価値として提示することが求められます。

地域との関係性づくり

 ワーケーションは一過性の受け入れではなく、地域との継続的な関係構築につながることが理想です。そのためには、「おもてなし」だけではなく、地域の日常や飾らない姿を見せることが重要です。参加者が地域に対して親近感や当事者意識を持てるような関わり方を設計することで、その後の再訪や継続的な関係へと発展する可能性が高まります。

コンテンツ設計

 単に働く場所や宿泊場所を提供するだけでは、ワーケーションの価値は十分に発揮されません。「働く」「過ごす」「関わる」という要素に加え、学びや社会課題への関与といった付加価値を組み込むことが重要です。また、事前に参加者へのヒアリングを行い、関心や課題意識に応じて、行政や住民、企業とのマッチングを行うことで、より深い体験につなげることができます。

ワークとバケーションのバランス

 ワークとバケーションの時間配分については、さらなる工夫の余地があることが分かりました。業務に集中できるワーク時間を十分に確保しつつ、体験や交流の時間とのメリハリをつけることが求められます。また、プライベートスペースの確保や、周辺の散策スポットなどの情報提供も、参加者の満足度向上につながる重要な要素です。

今後のニーズ

 北海道型ワーケーションは今後、避暑地利用や二拠点居住への入り口としての役割も期待されます。そのため、学習型、チームビルディング型、ライフスタイル型、社会課題型、関係人口・移住体験型など、目的を細分化した設計が重要です。目的に応じたプログラムを用意することで、参加者の期待に応えやすくなり、事業としての持続性も高まると考えられます。

【アドバイザーからの主な意見】

 今回の研修会では、特に体験コンテンツ造成の観点からアドバイザーより意見をいただきました。

 ワーケーションを企業研修として成立させるためには、ツアー全体の設計力と、受け入れ側であるフィールドの質の両方が重要であることが共有されました。具体的には、どのような視点で体験を切り取るのか、参加者をどのように受け止めるのか、また地域としてどのような魅力や条件を備えているのかといった点について、評価・判断のための基準を教えていただきました。

 また、地域の魅力を「ある・ない」で単純に判断するのではなく、すでにある資源や取り組みを十分に活かしきれているかを見直す視点の重要性が示されました。あわせて、事前に過度な期待を持たせず、地域の実情をそのまま伝えることが、結果として体験後の満足度向上につながることや、参加者が自分に合った関わり方を選べるように、複数の選択肢を用意することの有効性についても共有されました。

 近年高まる環境保全への関心を踏まえ、ゴミ拾いや環境改善など、地域課題に参加者自身が関わる体験を組み込むことも、体験コンテンツとして有効であるとの示唆がありました。

【まとめ】

 今回の研修会を通じて、ワーケーションを企業研修として活用するためには、地域理解や人材育成の視点をどのように組み込むかが重要であることが改めて認識されました。

 特に、事前段階で地域が抱える課題や背景、目指す方向性を共有しておくことが、現地での体験や対話の深度を高めるうえで欠かせません。また、自治体・企業双方がワーケーションを通じて何を実現したいのかという目的を明確にすることが、事業の成果や評価につながる重要な要素であることが確認されました。

 あわせて、単発の受け入れに終わらせるのではなく、研修後も関係性が続いていくような継続的な関わりを見据えた設計の必要性も見えてきました。体験コンテンツについては、非日常性そのものではなく、地域の産業や暮らし、価値観をどのように学びとして組み込むかが、企業研修としての価値を高める鍵となります。

 本研修会は、地域課題の事前共有、目的の明確化、そして継続的な関係づくりを軸とした企業研修型ワーケーションの方向性を整理する機会となりました。