Warning: Undefined variable $title_jp in /home/xb549058/hokkaido.lg.jp/public_html/www.hokkaido-work-vacation.pref/hwvwp/wp-content/themes/hokkaido/header.php on line 497

Warning: Undefined variable $title_en in /home/xb549058/hokkaido.lg.jp/public_html/www.hokkaido-work-vacation.pref/hwvwp/wp-content/themes/hokkaido/header.php on line 497

北海道へ 「地方移住」したいかも。

二地域居住の先輩に聞く

求められた場所に応えるという選択 仕事から始まった二地域居住

初海 淳さん(50代)

二地域居住のきっかけは、人それぞれです。移住への憧れや、観光の魅力にひかれて「住んでみたい」と感じることから始まる場合もあるでしょう。

しかし、初海淳さんの場合、その始まりは「仕事」でした。出張やプロジェクトベースで地域に関わり、一定期間滞在しながら取り組む――いわばワーケーション的な働き方を重ねるなかで、自身の役割が少しずつ生まれていきました。求められることに応えていくうちに、もう一つの拠点が自然と形づくられていったのです。

都市に軸足を置きながら、一定期間地域に滞在し、仕事を通じて関わる。そうした関係人口としての積み重ねが、やがて「通う場所」から「担う場所」へと変化していきました。

現在は北海道・斜里町と横浜を行き来しながら地域ブランディングに携わっており、その歩みは「求められた場所に応えること」から始まる二地域居住のかたちを示しています。

斜里町と横浜を行き来する二拠点生活

初海淳さんは東京のイベント・プロモーションを中心とした広告会社に入社後、コピーライターとしてキャリアをスタートしました。旅行パンフレットや観光ポスター、テレビCM制作、さらにはグループ全体のブランドスローガン開発など、観光とブランディングの分野で20年以上にわたり経験を積んできました。

2022年に独立した現在は、斜里町を主な拠点としながら横浜と行き来する生活を送っています。初海さん自身は斜里町に住民票を移し、月の半分ほどを現地で過ごしています。

知らなかった町から、「必要とされる関係」へ

初海さんと斜里町の出会いは、2015年に開催された観光ポスターのコンペティションでした。知床の世界自然遺産登録10周年を記念した斜里町のプロジェクトで、アートディレクターの原耕一さん、写真家の石川直樹さんが関わる企画にコピーライターとして参加したことがきっかけです。

しかし当時、初海さんは斜里町のことをほとんど知りませんでした。女満別空港の場所も分からず、6月の気候も想像できなかったため、防寒具を持参して訪れたほどだったといいます。

当初は出張で訪れるだけの関係でしたが、2018年頃から仕事の領域はさらに広がり、観光分野にとどまらず、漁業や農業のブランディング、地域の出版物の制作などにも関わるようになりました。こうした仕事を通じて地域のさまざまな現場と向き合うなかで、自身に求められる役割が次第に明確になり、それに応える機会も増えていきました。

一方で、外部の立場のままでは実現できないことや、関わり方の限界も感じるようになっていきました。

 

地域で求められる役割に応えるための二地域居住という決断

2022年、初海さんは20年以上勤めた会社を退職し、斜里町の地域プロジェクトマネージャーとして働くことを決意しました。

住民票も斜里町へ移し、地域の中に拠点を置くという選択をします。その背景にあったのは、「地域の外側からでは応えきれない仕事がある」という実感でした。出張ベースの関係では、どうしても仕事は単発で終わりがちになります。しかし、一定期間滞在するワーケーション型の関わりを経て、最終的に「暮らしながら働く」形へと踏み込んだことで、観光、農業、漁業といった個別の取り組みをつなぎ、地域全体の価値として提案することが可能になりました。

地域と関わっていくうちに、自身の仕事がこの町に根付いていることを実感する場面も増えていきました。たとえば、病院で自ら関わったキャラクター「知床トコさん」が使われ、町の人々に自然に受け入れられている様子を目にしたとき、自分の仕事がこの場所の日常の一部になっていることを強く感じたといいます。

その決断に不安はなかったのかと尋ねると、初海さんは「求められていることに応えていけば、大丈夫だと思っていました」と答えました。また、知床のプロジェクトで関わった写真家・石川直樹さんから「面白そうだから、絶対に行った方がいい」と言われたことも、地域へ深く関わっていく決断を後押しするきっかけになったといいます。

特別ではない日常から生まれる、新しい視点

斜里町での暮らしは、特別なものではありません。休日は本を読み、サッカーを観て過ごし、動画配信サービスを楽しむなど、都市と変わらない日常があります。

しかし、都市と地域の両方に拠点を持つことで、視点には変化が生まれました。

渋谷の人混みからは人間社会の力強さを感じ、知床の自然からは人が自然の中に生きていることを実感する。求められる場所が二つあることで、それぞれの場所を異なる視点で見つめ直すことができるようになりました。二つの拠点を行き来する日常は、自分自身の価値観そのものを広げています。

地域が求めているのは「関わる人」であり、「担う人」

初海さんは、前職でワーケーション企画や現在斜里町の地域おこし協力隊の募集などを通じて、多くの人と地域をつないできました。

ワーケーションで地域を訪れる人の中には、その土地との関わりを継続し、やがてプロジェクトベースで関わり続ける人もいます。初海さん自身がそうであったように、短期滞在は「入り口」であり、その後の関わり方次第で関係人口や二地域居住へと発展していく可能性があります。

その経験から感じているのは、地域が本当に求めているのは、例えるなら「プールで速い人ではなく、海で速い人」と表現します。整った環境の中で力を発揮する人ではなく、不確実な環境の中でも自ら考え、地域の中で求められる役割を見つけ、応えていける人。そうした存在こそが、地域に新しい価値をもたらしていきます。

また地域は、関わる側にとっても、自分の可能性を試し、新たな役割を見つけていくことができる場でもあります。これまでとは異なる環境で自分の力を生かしてみたい人や、仕事や生活の枠を少し広げてみたいと考えている人にとって、地域との関わりは、自分自身の可能性を広げる新たな一歩となるはずです。

 

二つの拠点を持つことで、人生の選択肢が広がる

求められた場所に応えること。それが、初海さんの二地域居住の原点でした。二つの拠点を持つことで人生の選択肢は広がり、都市だけでは見えなかった価値観や、自分自身の役割にも気づくようになります。

そして何より、「求められる場所がある」という確かな手応えがあります。必要とされ、その期待に応えていくことの積み重ねは、働くことの本質的な喜びにつながっていきます。

初海さんの歩みは、移住ありきではなく、「求められた場所に応えること」から始まる、新しい二地域居住のかたちを示しています。それは、自分の可能性と向き合いながら、地域とともに未来をつくっていく生き方の一つなのかもしれません。

 

 

戻る