体験談EXPERIENCE

2024/11/25

自治体担当者インタビュー

共創と交流の架け橋に:富良野市ワーケーションの魅力

北海道の豊かな自然と文化を有する富良野市は、観光地としてだけでなく、ワーケーションの推進においても注目を集めています。10月7日から11日までの5日間、東京を拠点とするデジタルサービス企業 株式会社リコーの社員9人がワーケーションを兼ねて富良野を訪れ、市内事業者に向けた課題解決の提案を行いました。この先進的な取り組みについて、富良野市役所の松野氏にお話を伺いました。

初の「事業課題共有・解決型」ワーケーションの受け入れ

「今回の「事業課題共有型」ワーケーションは、初めての試みです」と語る松野氏。これまでは、行政課題にスポットを当てた「地域課題解決」ワーケーションを実施したことはありますが、今回は市内の事業所にスポットを当てて、事業所が抱える課題を都市部の企業社員が共有し、解決に向けたアイデアを提案する機会を創出することを目指しました。この新しいアプローチにより、「市内事業所と都市部の企業社員の双方が良い刺激を受け、課題を共有することで関係性が深化しました。市内事業所の課題を解決していくことは、結果的に地域全体の課題解決にもつながる」と考えています。松野氏は、「今後も企業のニーズに合わせたオリジナルのプログラムを造成し、市は企業と地域の人々をつなぐ架け橋として、持続的な関係を築いていきたい」と語っています。

株式会社リコーとの長期的な関係構築

株式会社リコーが富良野市でワーケーションするきっかけは、市内のNPO法人 富良野自然塾と株式会社リコーが観光庁の事業を共同申請したことがきっかけです。「補助金が終了しても一過性で終わることなく関係を続けたい」という思いから、その後、リコーは自社の経費で定期的に社員を人材育成・研修型のワーケーションの一環として富良野市に派遣しています。「こうした取り組みは他の企業にも参考にしてもらい、人的資本経営の観点からも増えていくことを期待したい」と松野氏は話します。富良野自然塾やふらの演劇工房などのNPOが取り組む環境教育や人材育成をキーワードにした地域プログラムが企業のニーズに合わせた形で提供されることが、関係性の継続を支える鍵となっています。特に、実施前のプログラム造成や滞在中の企業社員と地域を結ぶコーディネーターの存在と役割が重要です。滞在中のプログラム提案のほか、企業が富良野での活動を最大限に活用できるようサポートするこの役割は、ワーケーションの成功を左右する要素です。

富良野市のワーケーション誘致の成果

富良野市は、ワーケーション受入にあたって観光コンテンツを前面に出さず、人材育成や事業・地域課題の研修型プランまで、幅広いプログラムを提供できることが強みです。「一方で、企業ワーケーションだけでなく、親子ワーケーションへのニーズは特に高く、さらなる受け入れ環境を強化することで成長が期待できる」と松野氏は述べます。特に、本市へ訪れる前に抱える不安をどれだけ解消してお越しいただけるかに注力しています。滞在施設の管理者や保育施設の関係者など、事前のオンライン面談により顔の見える関係を築いて不安を解消し、安心して滞在できる体制を整えています。滞在期間中のコーディネートも細かくフォローをし、滞在後はSNSを通じた継続的なつながりも重視しており、関係人口の創出に向けた活動を続けています。

富良野市・北海道の魅力

「人々の温かさ、自然の豊かさ、そして美味しい食事」は、北海道に限らず他県などにもありますが、強調できる点と言えば、「夏は涼しく過ごしやすい気候」や「花粉症(スギ花粉)が少ない環境」といった北海道全体の特性も大きな魅力です。富良野市の場合、滞在に欠かせない宿泊施設の多様性に加え、NPOと連携した研修プログラムを持つ点で他地域との差別化を図っています。一方で、若い世代を中心にスノーアクティビティの趣味を持つ方が、オフの時間に富良野スキー場でスノボを楽しむなどのワーケーションニーズもあります。こうした数多くの地域資源を企業や個人が安心して参加できるよう支援するコーディネーターの存在は、富良野のワーケーションの成功を支える重要な柱です。

ワーケーションによる地域のメリット

観光と異なり、ワーケーションは長期滞在による経済効果のほか閑散期や平日利用が期待できます。「参加者が3日から2週間以上滞在することで、地域経済への貢献度は非常に高い」と松野氏は述べます。さらに、観光目線とは異なる地域資源(=住民や文化など)と関わることで、参加者も受け入れ側も新たな発見や気づきを得られ、富良野ファン創出に期待が持てます。

最後にメッセージ

松野氏は、「リコーさんとの取組をロールモデルに、他企業のニーズに合わせた地域プログラムを造成し続けます。勿論、個人の参加も歓迎しており、再訪者が居場所を感じたり、必要とされるような環境、すなわち、その方にとって第2・第3のふるさとづくりを醸成していきたい」と述べました。富良野市はこれからも地域と企業を結ぶ架け橋として、より多くの人々が富良野のファンとなり、関係人口として地域に寄り添う未来を目指しています。